モチベーションの高い学生の属性

ここまで、9名の学生・生徒が作成したシートを観察してきた。その中で、所属もしくは出身高校および所属大学に関係なく、初めて学ぶ講義内容に対して次のような学生・生徒層が存在するのを確認できた。

●メモ作成などに工夫を凝らし、高いモチベーションを維持して何とか理解して文章にまとめようとする。

●モチベーションが損なわれ、文章にまとめようとする努力を放棄する。

●大学の講義を経験し、その向き合い方を学ぶことを通じて、文章でまとめる力がつくようになる。

いずれも、学生・生徒を一定期間観察すれば容易に実感できるものであるが、ここで重要なポイントは、こうしたことがシートの出来栄えに直結するということである。

ところで、これまでの紹介でモチベーションという言葉が出てきた。これ自体は序章でも指摘したように学力に依存すると考えられるが、わずかなきっかけで簡単に崩れる性質を持っているとも言える。これに関連して、興味深い調査研究があるのでいくつか紹介しよう。

倉元直樹と大津起夫は、2000~09年度におけるAO・推薦・一般の3種の入試制度と、それぞれの入試制度を経て入学した学生の学籍状況(除籍・退学・留年)と成績状況との関連性を、東北大学の有効データ23,270名分を使って調べた。その主要な結果は以下の通りである。

・1度も留年や休学することなく卒業した「ストレート卒業」の割合は、【推薦Ⅰ】87.2%、【AOⅡ期】84.1%、【AOⅢ期】81.8%の順に高かった。

・退学等の割合は、【一般後期】18.1%、【AOⅢ期】11.5%、【推薦Ⅱ】10.1%の順で高かった。

・開講科目における成績と修得単位数の状況は、推薦やAO入試を経て入学した学生の方が良好だった。

この結果を見ると、一般入試ではなくAO入試や推薦入試で入学した学生は成績状況がよく、その結果ストレートに卒業できている傾向が強いこと、その反面、それらの学生の中で除籍や退学した者の割合も決して低くはないことが分かる。