一方、雑草は農村だけでなく都市でも問題になっており、人の生活様式や雑草の生き方もまた農村と都市で異なります。

このことは雑草の適切な制御方法とは、コスト、労力、環境などを含めて、状況に応じて複数の方法を組み合わせることを意味しています。以下に、さまざまな雑草の制御方法について説明します。

雑草の制御方法は生物的、耕種的、機械的、物理的および化学的な方法に分けられます。生物的な方法は無農薬栽培や有機栽培として注目されており、その一つが図表2に示す米糠(こめぬか)除草です。

写真を拡大 [図表2]米糠除草(小笠原)

米糠を水田に施用すると微生物が増殖して呼吸量が増え、その結果、水中の酸素濃度が低下して、雑草の生育が抑制されます。米糠そのものは生物的とはいえませんが、間接的に微生物を利用していることから生物的な制御の範疇に含まれるといえます。これが米糠除草の原理です。

ただし、この方法は全ての水田雑草に有効ではありません。生育に酸素を必要とする好気性のイヌビエには高い効果を示しますが、生育にあまり酸素を必要としないコナギやアゼナなどの茎葉を水面に出す(ちゅう)(すい)(せい)の雑草や、植物体全体が水中にある(ちん)(すい)(せい)の雑草には効果が劣ります。

また、同じヒエ類でも嫌気的呼吸をするタイヌビエには効きませんし、米糠が河川に流れ込んで富栄養化を引き起こすという問題もあります。一〇アール当たりコメの収量を(もみ)換算で五〇〇キログラムとすると、米糠の量は籾のおよそ2割ですから一〇〇キログラムになります。

一方、米糠除草では一〇アール当たり一五〇キログラム~二〇〇キログラの米糠が必要ですから、米糠除草は当該の水田から得られる米糠だけでは賄いきれずに、不足分をよその水田から得られた米糠で補わなければならないことになります。その結果、地域全体で米糠除草を始めようとしても、米糠の供給量が需要に追いつかず、米糠除草が特定の農家だけに限定されることになります。