俳句・短歌 短歌 2022.01.23 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第45回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 遠嶺に上る煙は影ふかし ひねもす燃えて位置を変へたり 遠空の曇は赤く下照りて 今宵も山は焼けつヾくらむか 草山を幾つへだてて天あめかぎる 智異の遠峯の青きしづもり
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『愛は楔に打たれ[人気連載ピックアップ]』 【第6回】 青石 蓮南 その日は、三か月に一度、父と会える特別な日であった。蓮は朝から心臓が激しく鼓動するのを感じていた… 蓮が野球を始めたのは、小学四年の時だ。その日は、三か月に一度、永吉と会える特別な日であった。蓮は朝から心臓が激しく鼓動するのを感じていた。両親が離婚してからも、蓮は永吉に会う機会が与えられた。それは、永吉と有花との間で約束された事であった。三か月に一度は有花に連れられ、両親が離婚前に暮らしていた永吉の実家へ向かう。有花はその日、蓮と省吾を永吉の祖母に預けた。「気を付けてね」「うん!」一瞬、曇った…