俳句・短歌 短歌 2022.01.17 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第44回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 山焼けの煙なびきてひろごれば おほに濁りぬ嶺の上空 低嶺に燃え移ろひし黄げむりの 忽たちまち黒く直立すぐたちにけり みんなみの智異の裾野に煙立ち たゆたふ中に日は傾きぬ
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『魂業石』 【第13回】 内海 七綺 あの若い警察官、あの人の息子だったのか。私に人の殺し方を教えた、犯罪者のお手本みたいなあの人の…。笑っちゃう。楽しい。 上目遣いに尋ねたら、伸親の頰はますます赤くなった。「なんでそう思うんだい?」「あの若いお巡りさん、なんだか疑っているように見えたから」「あぁ、優真は刑事志望でさ、交番時代に事件に立ち会って解決に貢献したら刑事課に行けるって、張り切ってるんだ」「そうなの? でもなにか事件かもって思わせるようなことがあったんじゃない?」「ないない。俺も万が一を考えてパトロールがてら聞き込みをしてるだけで、飛熊署から…