出産当日、保健師に無事に生まれたことを電話で報告すると、事実確認のため役場の職員と一緒にやってきて、無理やり家に入り新生児を見ようとしました。パートナーが、出産当日の母親は安静が必要で、特に新生児は抵抗力が弱いため、外来者との面会を避けたい希望を伝えたものの応じてくれず、押し問答になりました。
憤慨したH・Bさんは、生き方の選択として、プライベート出産を選択したことについて、このように話しています。
「もうこの世界の中で一番ベストな安全な方法を選んで産んでるのがプライベート出産なわけじゃん、私たちにとっては。そこがもう相手との価値観、役所との価値観がさ(違っていた)……」
「(自分たちは)自分の生き方の選択の一つとして、子どもと向き合って、ちゃんと自分の自然の流れに沿ったお産を(した)……」
「病院に行くことで子どもを守る人もいれば、病院に行かない選択が子どもを守るという、私たちみたいな人間もいる……」
H・Bさんに対する保健師など行政の対応から、H・Bさんは注意を要する妊婦としてみられていた様子が窺えます。
なぜ「虐待予備軍」のような扱いを受けたかというと、厚生労働省は、子どもの虐待による死亡が生じ得るリスクとして、「妊娠の届出がされていない」、「母子手帳が未発行である」、「妊婦健診が未受診である」、「医師・助産師が立会わないで自宅などで出産した」を挙げており、おそらく、H・Bさんが該当する妊婦とみなされたからでしょう。
実際にはH・Bさんは未受診ではなく、妊娠初期に受診し妊娠の届出を済ませ、母子健康手帳の発行もなされていたのですが。このことから、病院など医療機関の医療者のみならず、保健福祉に関わる行政からも、プライベート出産は問題視されていたことがわかります。