ツイン・エネルギーとしての働き

オープンさを維持し、決断する。このツイン・エネルギーは、私たちが何かを評価判断する際、オープンさと自己尊重の両方が必要となることを伝えています。私たちが、異なる考えに心を閉ざして何かを判断することがあれば、必ず、正してくれるはずです。逆に、人にばかりオープンになって自己犠牲をして決断をすることも良しとしません。心を開いて未知なるものから学ぶ姿勢をもち、且つ自分を尊重して決断することで、道が開かれることを示しています。

健太郎の物語

健太郎は、6人家族の末っ子です。小さい頃から両親・兄・姉に可愛がられ、何をやるにも最も安全な道を選択できるよう、家族から助言を受けて育ってきました。どの高校に行ったらいいのか、部活は何がいいか、就職はどこがいいか、誰とつきあったらいいのか―すべて兄と姉が決めてくれました。日常の中でも、食べない方がいいもの、観た方がいい映画など、彼らのマネをすれば間違いがなかったのです。

健太郎は、自分は愛されていることを実感し、兄と姉の助言を歓んで受け取って育ってきました。そんな健太郎は、大人になるにつれ、その生き方が通用しない現実に直面するようになります。結婚した健太郎は、妻からその優柔不断さを責められるようになるのです。

どっちでもいいよ。これが健太郎の口癖でした。その言葉を聞く度に、妻はなんとも言えない気持ちになっていました。決断はいつも私がしなければならない。本当に困った時に夫は何の力にもなってくれない。そうした愚痴を妻は健太郎にぶつけますが、健太郎はいつもそれをひょうひょうと聞き流すだけだったのです。そうして2人はぎくしゃくしながらも、夫婦生活をなんとか続けていったのです。

一方で、健太郎は、1人悩みを抱えていました。それは、今の仕事にやりがいをもてないことです。兄と姉に勧められて就職した会社でしたが、充実感はありません。かといって大きな不満があるわけでもありません。ただ、このままでいいのだろうか、そんな不安がよぎるようになっていったのです。

長くその気持ちを抱えながら仕事をしていましたが、ここにきて、昔から思いのあった映像に携わる仕事への情熱が自分の中でふくらんできたのです。健太郎は苦しみました。なぜなら、その気持ちに正直になって決断すると、すべての人を悲しませてしまう―そう思ったからです。

兄や姉は何というだろう。妻は反対するに決まっている。皆をがっかりさせて、最後に自分は1人になってしまうに違いない。そんな恐れが頭から離れなくなり、夜も眠れなくなっていったのです。あきらめよう、遂に健太郎は人知れずそう決めます。これで悩まずに済む、そう思いほっとする健太郎でしたが、しばらくすると、一層気持ちが重くなってゆくのです。

生まれて初めて自分がやりたいと思うことをあきらめるのは、こんなに苦しいことなのか、健太郎はそう思います。そして、さんざん悩んだ挙句、そのことを妻に打ち明ける決心をします。もしも妻が怒ったら……。反対したら……。何度も思い直しますが、最後にはまた同じ気持ちになる自分を感じ、健太郎は決死の覚悟で妻と対峙することにしたのです。