試合はハーフタイムへ

後半開始を促すレフリーの笛。フィフティーンが背中を見せてグラウンドに散って行く。

「よかった。終わってなかった」

額に汗の粒をたくさん浮かべた基が、背後に立っていた。両手にはぎっしりスポーツドリンクが詰まったレジ袋。

「バルちゃんも、来てるぜ」

土手の上で、身体に似合わないゴツいカメラを構えている小柄な女性を、基が指さす。石宮くんは、必死になってタックルに行った。はね返され、グラウンドに腹ばいになり、苦痛に顔をゆがめてもすぐに表情を引き締めて。西崎くんはスクラムで、耐えに耐えた。

後半から入って来た相手3番の大きな選手に対しても、頑張るんだと全身で言っているようだ。でも、走力のなさはどうしようもなく、自分の走るべきコースを見失う。保谷くんも寺島くんも、密集の中でもみくちゃにされ、消耗を重ねているのが目に見えて分かる。

それでも、目の光は失われない。佐伯くんのパスは、どんどん混乱していった。そのパスを受けるべき足立くんの声も聞こえなくなってしまったのか、フォワードの頑張りで攻撃のチャンスをつかんでも、バックスラインは機能しない。澤田くんも前田くんも、ボールタッチのチャンスがほとんどなかった。一つ、二つ、三つ、と、トライを失う。