待ちこがれた再会
初夏の空気に包まれたうららかな空が広がる。通りに漂うエスプレッソの香りに引き寄せられて、カフェの横に自転車をつけた。
「おはよう、サトシ。今日から再開?」
「おう、ケン、久しぶりじゃないのー!」
懐かしそうな目で見つめ返すサトシは、ともに代官山で店を構えて助け合ってきた仲間だった。
「やっと、やっとうちは営業再開だよ。そっちはどうしていた?」
「うちはずっと開けていたよ。お客さん少なかったけど」
「おれは冬眠みたいに家から一歩も出なかったよ。腕が落ちてたら心配だよ。いつものでいい?」
淹れたてのエスプレッソにミルクフォームで、たくさんのハートを描いて、カプチーノを差し出してくれた。
「愛がいっぱいだな」
「もちろん。お昼食べる暇もないんでしょう? クッキーも持ってって」
「サンキュー」
まろやかなカプチーノが口いっぱいに広がるのを味わいながら、駐輪場に自転車を停めた。カップを片手に、店に続くらせん階段をあがった。
「おはよう」
ドアを開けると、カウンター上のコウモリランは朝陽に照らされてご機嫌のようだ。無言の微笑みを投げかけている。
カウンターの予約台帳を開くと、週末の列は隙間なく予約で埋め尽くされていた。今日は朝の英会話が終わったら十時早々に予約が入っている。緊急事態宣言が解除されてから、待ってましたと言わんばかりにお客さんが押し寄せてきた。店をスタイリストと二人で切り盛りする俺にとっては、猫の手も借りたくなるほどしばらくは忙しい日々になりそうだった。