あの時の道
人造湖から林に入れば
もうそこは人影の少ない山道
それにしても何という寂しさなのだろう
入り日の赤さが樹木を染めてふるえている
あの女の立った崩れそうな崖は補修されていた
近いと思った道は意外と時間がかかる
寺院の門は脇を通る
あの時は通りながら腰を抱き口づけをした
周りは山と湖と遠景の街、意外と良い景色ばかりだ
今、日が山に沈む
あの時、私は何を見ていたのだろう?
あの女は枯れ葉の音に耳を傾け、湖を愛でた
私は一人、日の暮れた道を引き返す
人造湖からの風は冷たく、柊を鳴らしていた