ウラシマは「安心してください」と言われたものの、こんな巨大船をキャッチできるのか半信半疑であったが、4万年の科学技術の進歩を信じるしかなかった。
「まもなく全電源停止します。あとはよろしくお願いいたします」
何とも人間らしい挨拶で締めくくられた。
地球防衛隊からは、ウラシマを追尾する無人護衛機を火星基地から2機発進、ウラシマのすぐ横を並走して追いかけることとなった。
この無人機には人型アンドロイドが乗り込んでおり、人間とほぼ同じ作業ができる能力がある。
そして、ウラシマから送られた構造データからまず外壁の調査に入り小型探査機を横付けさせた。
外壁を覆っているのは出発時、月の岩石を加工して貼り付けていた鱗のような石の板であるが、その外壁はすでに強度を失い小型探査機が触るだけでボロボロと剝がれ落ちる始末である。
「こちら護衛機、本部応答願います」
「ウラシマの現状を報告しろ」
「ウラシマの外壁に作業用のアームを伸ばして触ってみましたが、触るだけで表面がボロボロと取れてきてしまいます。まるで砂の彫刻でできているような感じです」
宇宙防衛隊は、ウラシマをキャッチする手段を探る。そして極力圧力をかけずにキャッチするシミュレーションを何度も確かめた。
再び接近するのは2年後、全長4キロメートルもある飛行物体、しかもその速度は第3宇宙速度時速6万キロ、秒速16キロに近いのである。
人類が宇宙に進出して4万年の中でも経験のないミッションである。
かつて人類は西暦7800年頃、大量の隕石が地球に落下した大災害の経験をもとに隕石の誘導技術を磨き上げてきた。
しかし、今回は今までとは違う速度でしかも全長4キロメートルもある巨大船、しかも壊れないように安全にキャッチしなくてはならないという困難極まるミッションの始まりであった。