事件直後、現れた二人組の老婆。野原に近づく目的とは…?
会社に上番報告を入れ、事情を説明し、パトロールにかかろうとすると、待ちかねたように大と小の老婆が現れた。
「また鳩が殺されたって、あんた何してたのよ」
最初からむちゃくちゃの罵声がとんできた。
「これは私の出勤前のことでして」
「言い訳するんじゃないよ。朝の九時から夕方の六時迄なんて形式的なことばかり言って、実際には何の役にも立ちやしない。辞めな。とっとと辞めて他の人にゆずるんだよ」
もう口をきくのも嫌になって黙りこんだ。
「あんたも言ってやんな」
小柄な老婆に命令した。
「こんな奴にパトロールさせるなんて、全く税金のムダづかいだって」
「え? は、はい……」
「もういいよ。全くグズなんだから」
大柄な老婆は手にしていたレジ袋を、小柄な老婆に押しつけた。
「これを、うちに入れといて」
「はい……」
小柄な老婆はレジ袋を持って小走りに公団住宅の方へ去って行った。
「まったく役所は何を考えてるんだろうね。まともにパトロールもできない人間を雇ってさ」
もう付きあいきれない。パトロールがあると告げてベンチに沿って歩きだした。
「逃げるのかい?あんたが辞める迄、役所に陳情しつづけるからね」
怒鳴るような声を背中に聞きながら園内を歩く。鳩の死骸のあったところは、もう何の痕跡もない。
飯村巡査にああ言ったが、百パーセント、カラスの仕業とは言い切れない。
一度外へ出て国道を歩いて正面入口から園内に入った。ベンチで大村が待っていた。肩をすくめて、寒そうだ。
「おう、また鳩が殺されたってな」
相変わらず憎々しげに言う。
「てめえ、何してたんだ」