母親の精神的健康は育児に影響しますので、育ちゆく子どもたちの発育・発達が気になります。新型コロナウイルスの影響で医療崩壊が叫ばれていますが、感染者を受け入れるため、あるいは院内感染の発生により、分娩の取り扱いを休止した病院が数々あります。
そのことで、妊婦は病院を追い出され、新たに産み場所を探さなければならない事態となったのです。助産師は看護師資格を持ちます。総合病院などでは産科病棟で助産師業務を行っていた助産師が、看護師として感染者の対応にあたることを余儀なくされたということも聞いています。助産師は妊産婦に寄り添う機会が奪われているのです。見えないところでどんどんと出産環境は大きく変化しています。近年、分娩の取り扱いを止める病院が相次いでいますが、コロナ禍で加速するかもしれません。
2 近年の出生動向
現在、わが国ではほとんどの女性が医療の管理のもと、病産院で出産しています。厚生労働省の人口動態統計調査では、出生場所は「病院」、「診療所」、「助産所」、「自宅」、「その他」に分類されています。
「病院」、「診療所」は医師が医業を行う場所で、「病院」は20床以上の病床を有し、「診療所」は19床以下の病床を有するもしくは病床を持たない医療施設、そして「助産所」は助産師が助産師業務を行う場所です。なお、「助産所」は「○○助産院」という名称で開設されているところが多く、一般的には”助産院”と呼ばれていますが、本書ではインタビューの語り以外は「助産所」で統一します。
この人口動態統計をもとに、1995年以降の出生場所の動向を表1に示します。日本の少子化は加速しています。出生数は、2016年に初めて100万人を割り97 万6978人となり、2019年は86万5239人でした。これから親になっていく世代の人たちが生まれた1995年の出生数118万7064人と比較すると、2019年は3割近くも減少しています。
さらに、2020年は新型コロナウイルスによる産み控えが懸念されていました。厚生労働省は、2020年の1月から10月までの妊娠届出数について、2019年の同期間の数と比較し、5.1%減少していることを報告しています。
少子化にはさまざまな原因が考えられ、これまでいろいろな政策が打ち出されてきました。しかし今やこのような事態となっています。私は常日頃から「子どもが生まれない社会に未来はない」、「少子高齢化がどんどんと進んでいく日本の未来は誰が支えていくのだろう」と日本社会を憂えていたところでした。