上司の品格

H課長には本当に苦しめられた。いつも僕を小馬鹿にして、しつこいほどからかう。あるときなど、H課長が書類を渡そうとしてきたので僕が手を伸ばすと、すぐに引っ込めるのだ。頭にきたから課長の手から書類を奪い取ってやった。それが気にいらなかったらしく、頭ごなしに怒られた。

「課長が嫌いです」

とはっきり言ってやったこともある。会社に進退伺いも出した。Y支援部長に個人面談をお願いして、過去の悪戯電話の冤罪の件や日頃の小さな嫌がらせ、業務妨害などを報告した。

例えば、年度末の2月にH課長とこんな言い争いをした。

「お前の休日日数、3月分はもうない。年度の休日114日を使いきった、どうするんだ?」

「では、休みなしに働くんですか?」

「それはできない」

「では有休の申請ですか?」

「それも違う」

頭にきた僕はついに、

「アンタは管理者だし、勤務表をつくるのもアンタなんだからそんなこと言われてもわからないよ! 総務課に相談してきます!」

と声を荒らげた。

また、H課長が現場支援課長だったころ、利用者さんのことを話し合うための課会議を職員の社会福祉士の勉強会に変え、その時間の残業手当を認めたと言った。僕は一切合切をY支援部長にぶち撒けた。Y支援部長は静かに頷きながら聞いていて、

「お前の言うことはわかった。後は任せろ」

と言ってくれた。僕は全てをぶち撒けてとてもスッキリした。

もっとスッキリしたのは、H課長がY支援部長とT園長に呼び出されて大目玉を食らったこと。「ザマァ見ろ!」と喜んだ。次の日、H課長は出勤してきた僕に、

「お前チクったな!」

と言うから、

「ハイ、チクりました」

と言ってやった。ほんと、パワハラ上司は困る。

結局、数年経ってH課長は同じ系列の障害者施設に異動、課長職を解かれ一職員となった。そこでかつての部下に使われるようになり、後に辞めたと聞いた。