俳句・短歌 短歌 2021.11.08 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第24回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 定めなき人の命と説く僧の 言葉諾うべなふ病みつつあれば 妹のみ魂送りし帰るさに 螢とらへて又放ちたり 遠山を覆ひてたむろする雲の 影の暗きは嵐かこもる
小説 『眠れる森の復讐鬼』 【新連載】 春山 大樹 赤信号無視の乗用車が、トラックに衝突し大破した。シートベルトをしていなかった重症の若者が搬送された、その病院の医師は… けたたましいサイレンの音が鳴り響いている。そしてその音は嫌な気持ちになる程どんどん大きくなってきて、すぐそこまでやってきたと思ったら突然聞こえなくなった。ERの自動ドアが開いて救急車から下ろしたストレッチャーを白いヘルメットと青いコートを身に着けた二人の救急隊員が中に運び入れた。ストレッチャーの上で、頸椎カラーを装着され、オレンジ色のクッションで頭部をバックボードに固定された若い男が苦しそうに冷…
エッセイ 『ALS―天国への寄り道―[人気連載ピックアップ]』 【第8回】 島崎 二郎 「医師として、もう、責任が取れない段階に入っているということです」―妻の命がかかっている。あがく私に先生は… 「ALSの場合、TDP-43のタンパク質量とかで、推定されるのでしょうか?」「それは、増えているということは分かっているんです。しかし、病気を快復させるために増えているのか、病状を悪化させるものなのか、それさえ分かっていません。もう、その辺でよろしいですか?」「病気の原因が分からない。結局はそこに戻ってしまうということですか?」私は堂々巡りをして、肝心な京子の延命期間を数字として聞き出せないでい…