公園の裏の三棟の公団住宅はもう三十年以上前に建てられたもので、建物も住人も古くなってきた。そのうち公園の方から見て右端の棟に、生活保護を受けている人が多く住んでいる。そこで口の悪い人間が生活保護者の“者(しゃ)”をとってシャタクと呼んだのがはじまりだという。

美代子シェフに礼を言って公園へ戻ると、私が基地にしているベンチに男が腰かけている。小笠原老人が名前を教えてくれた、大村という男だ。

「またサボってやがる。てめえの休憩は十二時から一時だろう。今何時だと思ってるんだ。二時過ぎじゃねえか。俺達の税金で仕事をもらってるんだ。ちゃんとやれ、ちゃんと」

「サボってはいませんよ」

こんな奴に弁解する形になるのも癪だが事実は言っておかなければならない。

「午前中のパトロールを一時迄やって、休憩を一時間ずらしたんです」

「ふん。勝手に変えるな。十二時から一時迄が休憩と皆そう思っているんだ」

「はい、わかりました」

バカバカしいと思ったが早く追い払う為にとりあえず頭を下げた。

「ちゃんと見てるんだからな。サボるなよ」

大村は私が頭を下げたのに気を良くしたのか、後ろの柵を越えて帰って行った。

しばらく見ていると、右の棟の二階の廊下に姿を現し、右から三軒目に入っていった。

あそこが彼の住居なのか。