ダンディズムの入口に立つ
息子が初月給で、帽子をプレゼントしてくれた。「これが似合うお父さんになって欲しい」という涙が出そうな言葉を添えて。私は、感激すると同時に、傍らに帽子のある生活は「お洒落」なのか、「ダンディ」なのか、つい考え込んでしまった。
私達は、ファッション、インテリアなどを素敵にコーディネートしている人を見て、「お洒落」を感じることがよくある。例えば、定石ならストライプのシャツには無地のネクタイを合わせるが、時々、色合いも畝の太さも絶妙なネクタイを合わせている人を見かける。一方、殆どの部屋をバリ島風に、涼しげなトロピカル風なアジアンリゾートテイストでまとめている、素敵なお宅にお邪魔する事もある。
いずれにしても、「お洒落だなあ」と感心させられるが、少し考えると、両者に共通している「お洒落」とは、「自分の周辺の空間を高いレベルで調和させる志向性」と解釈できそうな気がする。
しかし、「ダンディズム」は少し違う。代表的な例として、帽子、葉巻、そして万年筆について論じてみたい。
まずは、帽子だ。ここでは、ヘルメットや作業帽は脇に置かせて頂き、良く見られる布製の山高帽、商品の種類としては、「フェドーラ」と命名されているものを対象とする。この帽子は、とても扱いが厄介だ。芯こそ入っているものの、布製で柔らかく、ヘルメットのように小脇に抱えられない。
そうかと言って、作業帽のように、折り畳んで鞄に入れる訳にもいかない。どうしても、左右どちらかの手が塞がってしまう。しかしだ。その不便さと気遣いを我慢して被った夏の日の爽快さは忘れられない。心地よい軽さと通気性。十分な太陽光の遮断性。こればかりは使ってみなければ分からない。まさに、「未知との遭遇」であった。これに味を占めて、夏の勝負服の際には、必ず被るようになった。
次は、葉巻である。私は眼疾があるため、ごく短期間で服用を止めたが、これこそ、極めつけのダンディズムだろうという印象を持った。最も大きな特徴は、煙草の屑を集めて紙で巻く紙巻きたばこと違い、葉巻は、たばこの葉をそのまま巻いて作られる。
その結果、次のような特性が現れる。①着火しにくい、一度着火しても灰皿においておけば、それ以上燃え進むことはない、②1本で長時間吸える(平均3時間程度)、③香りが豊か(きつい)。この結果、取り扱い方法及び、吸い方のマナーが自ずと決まってくる。