別に読まなくてもいいではないか……
国際学習到達度調査(PISA)によって、日本の高校生の読解力低下が浮き彫りになりました(二〇一九年一二月)。わが国の読解力の順位は、前々回の二〇一二年調査では過去最高の四位でしたが、前回の一五年は八位、今回は一五位と急落しました。
その結果、「読解力の自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに、引き続き課題がある」との見解が、文部科学省より示されました。
また、一日の読書時間「〇分」の大学生が半数近くいるということも、最近の読書離れに対してとかくやり玉に挙げられます。『第五五回学生生活実態調査』(調査実施時期二〇一九年一〇〜一一月)の概要報告によると、大学生一万八三二人中、四八パーセントが一日の読書時間を「〇分」と回答しています。
なぜ最近の若者は本を読まなくなったのか? 読書量の低下を危惧する識者がたくさんいます。バラエティプロデューサーの角田陽一郎さんが、自著『読書をプロデュース』のなかで明らかにしています。
「本を読むと楽しいですよ、人生が変わるきっかけになりますよ」、「直接できない体験や、会えない場所や時代の人とアクセスすることができるのですよ」ということを、聡明にもかかわらず本を読まない若手起業家に伝えたところ、「つらいし、時間がもったいないし、楽しくないし、それを書いた本人を知らないし、ネットの方が便利だから」というような回答でした。
要は、本にアクセスすること自体が面倒なのだそうです。ネット世代を端的に表している本音だと思います。本を読まない人にとっては、読書は読む以前の問題のようで、本に対する一種の心理的抵抗なのでしょう。本を読む努力をするくらいなら、努力をして本を読まない道筋を作った方がマシだと言っているようです。