第1章 オーバー30歳(over thirty)のクライシス
②オーバー30歳の可能性
働くということ
大学の青年心理学で「社会人になるということ」というテーマを講義すると、学生は決まって、「自分に合う職業が何かが分かりません」と言ってきます。少しアルバイトをしたくらいで、本当に自分に合う仕事が見つかると思う方が無理な話です。そういう学生には、自分に合う仕事というのは、自分が決めるものではないのだと伝えます。
まずは、自分を求めてくれる会社に入り仕事を始めてみることです。昔から言われることですが、「石の上にも三年」、どんな仕事でも最低3年は続けることが大切です。続けることに意味があるのです。
会社は、3年間は給料という名のお小遣いをあなたに払って仕事を教えてくれている現実を忘れてはいけません。それくらい、3年間は働いても会社の利益にはなっていないということです。
また、仕事が合っているかどうかを決めるのは、自分ではなく、与えられた仕事を着実に遂行できるようになって初めて他人が評価をしてくれるものです。自分に合った仕事が見つからないと言う前に与えられた仕事をきちんと成し遂げて、上司や周囲の人の信頼を得られるようにならなければいけません。
信頼を得るには十分な時間が必要ですが、失うのは一瞬だと上司から教わりました。今も大切な言葉になっています。
ビジネスの世界では、学生時代のように試験や偏差値のような分かりやすい数字で評価されることはありません。学生のとき、点数を取るのが得意だった人には自分の評価がわかりづらいとか、他人より評価が低いと思う人が多いようです。ビジネスは点数の高低を競い合うものではありません。多種多様な人間関係の中でいかに自分の能力を活かしていけるかが試されています。
自分の能力には謙虚になって、誰からも適切なアドバイスをもらえる人物であることも大切だと思います。ついつい大学教員の立場で、30代の皆さんには当たり前の話をしてしまい、失礼しました。