第三章 ガルシア牧場
第一話 寄宿舎
ガルシア牧場では、コンスエラが牧場の将来のことを考え始めていた。いつかはカルロスに牧場を任せなくてはならない。そのためには、カルロスに動物の飼い方や病気のことなどを、学んでほしかった。
そこで、カルロスが十五歳になると、コンスエラはカルロスを都会の学校へ行かせることにした。これを聞いたカルロスは、都会へ行けることがうれしくて、とび上がって喜んだ。祖母から聞いたヨーロッパの町ほどではなくても、これから行く所はこの国の首都だ。どんなににぎやかで、どんなに楽しいことがたくさん待っていることだろう。
学校と寄宿舎が決まり、いよいよ明日(あす)は出発の日となった。フィオリーナはこれまでに三回出産をし、子犬をたくさん産んだが、子犬たちは皆、もらわれていって、牧場にはいなかった。今もカルロスの一番の友達はフィオリーナだった。カルロスはフィオリーナの首をなでながら言った。
「学校が休みになったら、帰ってくるからね。それまで待っているんだよ。またすぐ会えるからね」
フィオリーナは別れを予感したのか、どことなく不安そうな表情を見せた。
翌朝、フィオリーナが自分を追いかけないように、首に結んだ綱(つな)を母にわたして、カルロスは車に乗りこんだ。いよいよ新しい世界への出発だ。コンスエラと並んで見送るフィオリーナの首に、カルロスの作った銀のメダルが光っていた。