貧困層、低所得者層の支援

もちろん、このことは第一に挙げなければならないだろう。誰もが必要最低限の生活物資を入手でき、文化的生活を営める社会を築く一助となる。非正規雇用者の雇い止めの不安を和らげることにもなるし、非正規雇用者のボーナス的な意味合いもある。

自営業者等は、基礎年金だけでは、たとえ満額でも厳しい生活となってしまうが、それさえ満額がもらえない人もいる。65歳以上の単身世帯での無年金者は男性で約10%、女性で約5%いるといわれている。厚生年金受給者は比較的余裕のある生活をしているかもしれないが、国民年金のみの受給者は基礎年金だけなので、きわめてつつましい生活を強いられている。

生活保護受給額に相当する年収以下で暮らしている高齢者は4人に1人だという。低所得者層の目安としては、住民税非課税世帯がその一つとして挙げられるだろうが、その境目となる世帯当たりのおおよその年収は、東京都区部では、単身世帯で約100万円、夫婦のみ世帯で約150万円、夫婦と子ども一人の世帯で約200万円、夫婦と子ども2人の世帯で約250万円、夫婦と子ども3人の世帯で約300万円である。

住民税非課税世帯は、働きたいのに働けない人、働いても収入が十分でない人のためのセーフティネットがカバーしている。保育料無料(幼児教育・保育の無償化)、大学無償化(高等教育の修学支援新制度)、国民健康保険料の減免、高額療養費の自己負担額の軽減等の支援を受けることができる。

このような支援に加えてBIがあれば、これらの人も一息つくことができる。経済的な理由や父母が労働に従事するために、児童養護施設を利用しなければならない子どもたちについては、BIがあれば、その数を減らすことも可能である。

また、生活苦から銀行カードローン、消費者金融やいわゆる闇金からの借り入れや貸与型の奨学金の必要を減らすことができる。日本学生支援機構の奨学金でさえ、第一種、第二種奨学金をフルで借りると、大学4年間で抱える負債は、単純計算で880万円以上となり、上限年利3%の金利を含めれば、返済総額は1000万円を超える。

後述するように、高校卒業時に、それまでのBIの一部を社会に出るための支度金として、ベーシックキャピタルのように給付して学費に納入できるようにすれば、大学の学費をほぼ賄うことも可能になる。なお、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックのときには、休業時の収入補填の意味もある。大規模災害があった際にも、将来の生活に対する不安を和らげるとともに生活再建の役に立つだろう。