「ゆうほ銀行および大手銀行に江藤光夫名義の銀行口座は見つけられなかったが、地元の銀行と信用金庫の2行に、合計して6万円が入金されている普通口座を見つける事ができたので、本人死亡の連絡をして凍結する手続きをしておいたよ。

そして、ここから先は地方裁判所に遺産相続の調停を申し立てしなければならないから、私達も仕事として報酬を支払ってもらう事になるし、雄二ちゃんには裁判所から指定された日時に、調停の話し合いに参加してもらう事になってしまう。

だから今、ここでひろみさんでなく雄二ちゃん本人が参加する意思があるか否かを確認しない限り、話を進められない状況になっているのです。

ひろみさん、もし調停の申し立てをされるのなら、私達は全力で雄二ちゃんのバックアップをさせてもらいます。そこで今夜、自宅に戻った時に雄二ちゃんに話をしてもらえませんか。よろしくお願いします」

私は姉達が言っている内容が半分ほど理解できなかったけれど、元夫の全遺産を元夫の愛人と実子の雄二が遺産相続する話し合いを、地方裁判所で行わなければいけない事は理解できたので、自宅に戻り分かる範囲で伝えようと決心した。

そして、仕事を終えて自宅に帰ってきた雄二に、私は自分が分かる範囲で元父親の遺産相続について裁判所で話し合わなければならない状況にある事を伝えた。

「なんて事だ。あの男は死亡しても、僕達に揉め事を残していったのかよ。母さんの話を聞く限り、裁判所であの男の全遺産の相続調停をしなければいけないのなら、伯母さん達に協力してもらってあの男の愛人と争う事にするよ！」

雄二は、しばらく見せていなかった元父親に対する怒りの感情を、全身で表現していた。

その様子を確認して、私は姉に雄二から承諾を得られた事を急いで連絡した。