PART4
2019年5月初め
ウイルソンがホテルに1週間いるその間、彼は航空券を買った。代理店に出向いて次の出発予定日の確認をしたと言う。
ウイルソンはその代理店から言われたことを、わたしに伝えてきた。
手元に現金、少なくとも$12,000(約125万)ないとアメリカに入国出来ないと。彼は$12,000を送ってほしい、とわたしに頼んできた。
じゃ、どうしてアメリカ行きの航空券が買えたの……?
今、思い出した! ウイルソンはシリアにパスポートを忘れてきた。それじゃアメリカに入国出来るはずないよ!
わたしはその$12,000の要求には応えないことにした。そのお金で彼は自分の好きな物を買ったり、私用に使うに決まってる。これまでわたしが彼の要求に応えてきたから、彼は調子にのっている。$12,000は大きい金額だよ。
ウイルソンは無一文。彼にはお金が必要。彼は自分が必要とするお金をわたしに催促する。食べ物代、病院の治療費、交通費などなど。
これまで何度か彼にアメリカ大使館に行くことを勧めた。アメリカ大使館でお金を借りられるはず。大使館は助けてくれるはず。
ウイルソンはそれについては応答無し。彼はアメリカ大使館に助けを求めに行かない。ウイルソンはこの先もずっとわたしにお金を要求するんだろう。
その上、ウイルソンはまだ治療が完治してないこともあって、よく病気になる。その度にウイルソンは治療費の一部と、薬代をわたしに催促する。
イスタンブールでの病院治療費、全額は未払いのまま。ウイルソンはほんとうによく病気する。重病になってこれまで2度死に損なった。
わたしは彼がシリアを出てからの彼の様子をずっと見てる。彼が死と生をさまよった時も。
……その度、号泣した。ウイルソンはたくましい。そんな状況の中にいてもしっかり生き延びてる。
彼は空港で2週間飲まず食わずで過ごしたこと以外に、今日までの間、数日間何も食べないことが多々ある。それでも今日も彼は必死に生きようとしている。
ウイルソンがわたしにこれまでお金を催促する度、わたしは彼をLINEからどれだけ削除したことか。
時にわたしは、別のターゲットを見つけて! と彼に自分の感情をぶつけた。削除しても彼はすぐLINEに入ってくる。わたしも彼をすぐLINEに入れてしまう。やっぱり彼のことを愛してる!
ウイルソンとわたしは、毎日LINEで話そうと約束している。時差があるのでタイミングが合わなくて、直接話が出来ない日もある。
そんな時、彼は決まって言う。
長い間テルヨはLINEに来てくれなかった。
直接話ができない日は、彼にしてみれば長く感じたのかも。
ウイルソンは、知り合った当初からわたしのことを"僕の女房"と言っている。ある時からLINEでお互いに"ダーリン"と呼び合うようになった。
彼はよく言う。神がテルヨを僕に送ってきた。わたしも神様がウイルソンをわたしに送ってきたと感じてる。
今まで数回LINEの中でウイルソンからプロポーズされた。
Aliceと3人でずっと一緒に暮らそう。結婚しよう!