来訪者 PART1
2019年1月8日
Wilson AndrewからFacebookの友達リクエストが届いた。
明るい栗色の巻き毛優しそうな碧色の瞳プロフィール写真のウイルソンはわたしに微笑んでいた。
わたしはひと目見て彼を気に入った。即、ウイルソンからの友達リクエストを承認した。
ウイルソンは、彼自身のことをメッセージで知らせてきた。ウイルソンはドクター。現在はシリア駐在のアメリカ軍で働いている。アメリカに帰って医療センターを開業することが彼の夢。
彼は今44歳。今から10年前に日本人女性と結婚した。つかの間の結婚生活で、奥さんは結婚2年後白血病で亡くなった。
ウイルソンはシングルファーザー。Aliceという10歳の娘がいる。Aliceはアメリカ、フロリダのプライベートスクールに入っている。テルヨフロンベルク、ステキな名前だね。
LINEのIDを教えてくれないか。
ウイルソンとわたしはそれ以降、LINEを使って話をするようになった。ウイルソンから聞かされる話は、シリアの軍の様子。テロリストによって軍人が死んでいく様。
今日は10人、軍人がテロリストに殺された。
今日は2人、軍人がテロリストに殺された。
今日は3人。
今日は……、今日は……。
ウイルソンは自分の心情を語った。あと任務は4ヶ月ほど残ってる。
シリアで死にたくない!
任務が終わるまでに僕は殺される!
シリアから逃げたい!
同時にウイルソンは彼の荷物をわたしの家に送ってもいいか、と聞いてきた。
荷物をわたしの住所に送りたいと言われた時、わたしは戸惑った。一日考えさせて、と告げた。
結局、翌日、自分の住所、電話番号を彼に送った。ウイルソンは任務が終わったら、わたしの家まで荷物を取りに来るという。
そのすぐ後、シリアのR&XDeliveryという運送業者からウイルソンの荷物の運送料金の振込口座がわたしに送られてきた。
運送料金$7,860(約82万円)。――すごく高い運送料!
ウイルソンに運送料金のことを言ったら、ウイルソンいわく、シリアは銀行が閉鎖されている。自分で運送料金を払うことが出来ない。
フロンベルクに会った時に絶対返金するから立て替えてほしい。
ウイルソンから聞かされた荷物の中には、ウイルソンのドクター記録書、貴金属、沢山の本。特にドクター記録書は大事な物。この先もドクターをしていくには、ドクター記録書は必要な物。
わたしは翌日銀行から$7,860を振り込んだ。ウイルソンから友達リクエストを受けて、その2週間後には彼の荷物にかかる運送料金を振り込んでいた。
振り込んだ翌日、銀行からウイルソンへの振込はストップしたとの電話がきた。銀行員は言った。
世の中詐欺師が多い。知らない人には100ドルたりとて振り込まない方がいい。銀行員はわたしのことを心配してそんなアドバイスをしてくれた。そしてウイルソンへの振込をストップした。
そんな銀行員のアドバイスにも耳を貸さず、翌日わたしは他の銀行の支店からウイルソンの荷物の運送料金$7,860を振り込んだ。
まだウイルソンと知り合って間もないのにこの頃にはわたしはウイルソンに夢中になっていた。