授業の進め方
個別化指導が主流
一斉指導より個人指導の割合が大きいのは、学力や特性、学習スタイルや興味関心などは生徒によってすべて異なるからだ。学習方法やペースも同じではない。それを一様に指導するのは合理的ではないし、有効ではないと考えるのだろう。学習目標が同じであっても、そこに至るプロセスは違ってよいのだ。すべての生徒が同じ方法で授業を受け、共通の基準で評価されるのは不合理だという認識があるようだ。
こうした認識から、近年は「個別化指導(differentiated instruction)」が主流になっている。
これは、すべての生徒を同一の方法で指導するのではなく、個々の学習能力や学習スタイル、文化や言語、社会経済的背景などの違いを考慮し、学習ニーズに合わせて指導する教授法のことで、日本でも最近取り入れられるようになっている。個別化指導の第一人者であるトムリンソン(C.A.Tomlinson)は、その原則として以下の8項目を挙げている。
(1)生徒と学習を積極的に支える学習環境を設定する
(2)教師は一人一人の違いを把握する
(3)学習を支援するようなカリキュラムを構成する
(4)評価と指導を切り離さない
(5)生徒の多様な背景や特性に対応した学習内容、方法、成果物を設定する
(6)学習は教師と生徒が協働して行う
(7)クラス全体の到達目標と個人の到達目標のバランスを考える
(8)教師と生徒は柔軟に活動する
また、その具体的方法として、生徒の背景や特性に応じた学習目標を明確にした上で、「学習内容(contents)」と「学習プロセス(process)」を多様化して授業を行い、個々の「学習成果(products)」で評価することを提唱している。
個別化指導の授業を参観していると、生徒は同じ教室にいるのだが、それぞれが好き勝手なことをしているように見えることがある。だが、よく見ると生徒は共通のテーマを扱い、時に助け合い、互いに刺激を受け合いながら学習していることがわかる。共に学習しているという意識も感じられる。