これからどうなる日本

暗い影を落とす日本の債務問題

世界各国と比較した国の債務と対GDPの日本の比率が最大で、2倍どころか、2・5倍に達しようとしている。新型コロナウイルスの感染拡大に対応した大規模な財政支出を、国債発行で賄うことになった。

2020年度末の国債発行残高は初めて1000兆円を突破する。これが、通奏低音のように重く日本人の心に鳴り響き、前向きの行動を尻込みさせている。日本を例示して、「財政赤字は心配しないで良い」というMMT理論があるが、これは日本が特殊な国、すなわち「世界に類を見ない超低欲望社会だから」とする見方もある。

いずれにしても危機からいち早く抜け出して、経済を健全な軌道に乗せるためにも、新たな経済成長のモデルにつながる「賢い支出と税負担」が、政府のみならず国民にも欠かせない。

国力衰退の予感

高坂正堯の『文明が衰亡するとき』には、

「ヴェネツィアは、かつて地中海を支配する大強国であったが、最後はナポレオンの脅迫の前にあっさり屈して18世紀末に国が消滅した。16世紀以降、階級が固定し、貴族階級が国を支配するようになるが、その貴族が結婚しなくなり、17世紀には6割が独身となった。理由は国家発展の基礎であった貿易を、リスクが高いと敬遠し、本土に土地を買って資産運用で生活するようになった。家に人が増えれば分け前が減るから子供を産まなくなる。

結局、国力の重要な要素である人口が減って衰退してしまった。それと、技術革新の遅れである。優れた造船技術を開発して、海洋大国になったが、15世紀にポルトガルやオランダの新しい帆船技術の開発が進む中、ヴェネツィアは造船の予算をほとんど増やさなかった」

と記されている。日本は、ヴェネツィアの歴史を決して忘れてはならない。

日本は、高度成長期にHONDAやSONYに代表されるように卓越したエンジニアリングセンスをもった指導者によって、すばらしい成功を収めた。しかし頂点を極めた1980~1990年代ごろから日本全体の企業が変化しはじめた。

すなわち、その業界の既存勢力と化し、かつての輝き勢いがなくなって行った。その間、アップルに代表されるように米国の有力企業は、大胆なイノベーションに投資し、世界の全く新しい膨大な消費層に向けて、製品やサービスを提供しはじめたのである。

日本ではTOYOTAに代表される数社の企業のみが、持続的な技術革新を志向しただけであった。大部分の企業は、リーマンショックに過剰に反応し、内部留保の蓄積を重視し、日本での研究開発・工場拡張などの投資を避け、既存技術の延長による海外展開で利益を確保する戦略(というよりもやむを得ない消極的戦術)を進めてきた。

一方、日本の製造業では「きつい・汚い・危険」と言われている「3K」のイメージが今なお根強く、若い世代からの応募が見込めず、好待遇が用意できず、先入観から志望者も集まらない状況という悪循環に陥る企業も多く見られる。

いま、「変われない」「変わりたくない」「決断ができない」など“既成の樽”に入りこんだ閉塞感に籠っているのが、現代日本の根幹に関わる大きな問題である。