財源の検討3 個人金融資産税

家計部門のお金が、市場を通して安定的に企業等に供給されるように、株式・投信には課税しないことも考えられる。家計の金融資産残高の5割強(約1000兆円)は現金・預金なので、これに課税すると10兆~20兆円となる。株式に課税するとしても長期保有の株式には課税しないようにすべきではないか。

この場合、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行うESG投資は課税対象としないことも考えられる。

横浜市には、国の「地方創生SDGs金融」の動きと連動し、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に沿ったビジネスに取り組む企業が資金調達をしやすくするため、業績や財務内容だけでなく、障害者の雇用率等非財務価値を分析して格付けし、市がこれらの企業を独自に認証する制度がある。

京都信用金庫、京都北部信用金庫、湖東信用金庫の3信金と龍谷大学もESG投資に取り組む中小企業を「ソーシャル企業」と認定している。

ただし、株や為替のHFT(high-frequency trading 超高速取引)は、投資プログラムを組み込んだコンピュータや人工知能が、所定の条件が満たされた途端に数千分の1秒というスピードで自動的に株を売買するシステムである。

原丈人によれば東京証券取引所では、1992年には株式保有期間の平均は5年を超えていたが、近頃では1年を切り、これが注文の7割を占めているため、金融取引税を検討することも必要だろう。なお、タックスヘイブンを利用して納税を逃れようとする人々が存在することが予想される。

このような租税回避行為は、他国に犠牲を強いるゼロサムゲームである。つまり我が国の税収を奪って、それを当該企業とタックスヘイブンで山分けするのである。

これに対しては、先進国が協調して、タックスヘイブンの低い税率との差を埋める矯正税を課税するべきである。あるいは、アメリカの「外国口座税務コンプライアンス法」のように、他国の金融機関であっても、顧客の口座の保有額を報告しなければ厳しい経済制裁を科す必要がある。