せっかちな私が一番辛いのは、老親と歩幅や歩くペースを合わせなくてはならないこと。

「そんなこと?」と思われるかもしれないが、これがなかなか大変だ。とにかく何をするのも動作がスロー。

病院に付き添う時など、自宅から出るのでさえ容易でない。持ち物の用意から靴を履くまでが長い道のり。そして車に乗り込むだけで「なぜ?」というほど時間がかかる。まるでスローモーションを見ているようだ。

病院に着いたら着いたで、診察券を出すところから大騒ぎ。病院内の移動にまた大層手間取る。採尿、採血、レントゲン、心電図、各部屋を回っていると、めまいがするほどイライラしてくる。

私は、家の中でまで小走りに移動する人なので、老人のゆっくりしたペースに合わせるのが本当に辛い。こんなことが月に何度もあると途中で大声をあげたくなる。

「サッサとしてよ」。しかし、そんなことはもちろん言わない。それはあくまでも私の心の中でのこと。表面上は、穏やかな態度と優しい口調を保つ。そして余計にストレスは溜まっていく。

人によって流れる時間の速さは違う。

子育て中はその時々の子どものペースに合わせ、親の介護では老いた両親のペースに合わせる。これは相当の忍耐を要するもので、毎日が修行である。きっと子供達も親も、私のペースに合わせるのに苦労していたのだろう。

家族にはそれぞれの歩幅と生きる速さがある。

育児も介護もそれを理解し、受け入れるところからスタートする。

マイペースというけれど人に合わせることも時に大切。そもそも自分のペースだって加齢と共に遅くなる。私も言われる時が来る。

「サッサとしてよ」。あーイヤだ。

猪突猛進ちょとつもうしん 猪が突っ走るように向こう見ずに進むこと