対人恐怖を一気に乗り越えた若い女性の魔法の一手

Sさんは今年十九歳になる清楚な女性である。

小学六年の春、大病をわずらい三か月間学校を休んだことからクラスになじめなくなり、不登校状態に陥った。

きっかけはコミュニケーションの微妙なズレや行き違いからクラスメイトに嫌みを言われたり、冗談で絶交のポーズをとられてからかわれたり、いきなり後ろから背中を押されパニック状態になったなどの惨めな思い出があったからだという。

幼少の頃から大勢の人がいる所が苦手で、物音や人の声に敏感だった。特に後ろに人の気配があるとすごく気になり、しきりに後ろを振り向く癖があった。

中学時代になると、またいじめられはしないかという不安と担任の怒鳴り声に萎縮し、不安がつのって登校がきつくなった。中学二年になると寝つきの悪さも加わって、ほとんど登校出来なくなった。

Sさんには幼少期から発達障害の特性があった。

音にすこぶる敏感だったこと、こだわりが強かったこと、極端な偏食だったこと、保育園にはなかなか慣れなかったことなどから発達障害が疑われ、検査を受けて、高機能自閉症の診断をうけた。

中学卒業後、通信高校に進学したものの対人不安はさらに昂じた。

スクーリングに参加した際、まわりの子がクスクス笑っても「自分のことを笑っているのではないか」と勘ぐったり、街中を歩いても「自分の悪口を言っているのではないか」とおびえ、「自分はブスだ」という醜形恐怖に陥り、マスクをつけないと外出できなくなり、とうとう通信高校も中退せざるを得なかった。