事故に遭った妻は…
どこかの店の店長をしているシンノスケという人物がいったい何物なのか、わからないまま、一ヵ月が経過した。
といっても二月は二十八日しかないので、実際には四週間だった。
今日、三月十四日の日曜日がちょうど智子が死んでから四十九日目に当たり、法要を行うことになっていた。
達郎は、寺の住職に法要を依頼し、近くの宴会場を予約しておいた。
義母はからだが不自由だったので何も手伝えない。
その点、義理の姉の聡子は智子の実の姉であるから、積極的に手伝って、活躍してもらいたかったが、母親に付き添うためにそれもあまりできなかった。
聡子の亭主は、極めて機転のきかない凡庸な男だったので、ほとんど役に立たなかった。
このような状況であったから、実際に全体に目を行き届かせながら、動き回って仕切らなければならなかったのは達郎一人だった。納骨をした後、死者の霊を弔うため、食事と酒を振る舞った。
達郎が、四十九日の法要に集合してもらった人たちに対して、礼の挨拶をした後、宴が開始された。
開催中も達郎は、あちらこちらのテーブルにビールをつぎに回った。日中は酒の酔いの回るスピードが速い。親戚の者を初めとして出席者の中には完全に酒の酔いがまわってしまう者が出始めた。
すると、今までのような残された亭主に同情的であった雰囲気が、少しずつ変化してきた。
「全く、亭主が、智子ちゃんをかまってあげなかったから、旅行なんかに出て、事故に遭っちまったんだよ。智子ちゃんは亭主に殺されたようなもんだよ」
と発言していたのは、智子の伯父にあたる人物だった。達郎が、ビールを持って、斜め前の席に座っているのがわかっていながら、大きな声を上げて話していた。
また、ある者は、
「亭主が大阪で羽を伸ばしているから、女房が旅行に行ったりするのよ。向こうに、女でもいるのに違いないわ……」
と言っていた。
それらを聞いて、達郎は立腹した。