狭心症末期
この案件が終わると、ますます身体の調子が悪くなっていた。以前より「狭心症」への対応は指導されており、定期的に通院はしていたが、そんな私の状態を知ってか、妻は、心配して病院に行くように強く勧めた。
「今日こそは、病院に行って再検査をしないと家に入れないから」
しぶしぶ、いつもの病院に行って再検査依頼をする決心をし、
「分かった。今度の土曜日に行くから」
いつもの、定期検査時のドクターへの現状報告は、
「順調で、問題はありません」
と、体調の如何にかかわらず、説明する言葉は同じだった。
死ぬときは、一回きりでもう終わり。その時は誰にも分からない。諦めが早い。そんなことを思いながら淡々と回答する。そんな私の、思いを察知してか、妻は、叱るように、
「絶対よ。私も行くから」
「いいよ。一人で行くから」
「駄目。行くと言って違うところに行くかも」
妻は、信じていないかのように私の顔を睨みつけて言った。
心臓マルチスライスCT検査、カテーテル検査等を行い心臓の状態を再検査した。診断結果は、
「極度な『狭心症』。いつ倒れるか分からない」
ドクターは、大変厳しい病状の説明をした。
「薬を出しておきますから、発作が始まったら、ニトロの錠剤を舌下に入れ、発作が治まるのを待ってください。その時は、すぐに病院に来て下さい。次回発作が起きれば、手の施しようがありません」
ちょっと、大げさな説明だ。
その後、たまたま、業務が忙しく、自分の体調を気遣う余裕すらなかった。