ベーシックインカムとハウジングファーストとベーシックサービスを基本に据える
国際連合広報センターホームページには、
「人間の安全保障とは、従来の国家安全保障に代わって人々の安全を保障しようとする概念です。貧困、紛争、環境破壊、感染症など世界の人々が直面する脅威を包括的に捉え、人々を中心とした視点からより効果的に対処することをめざします。」
との説明がある。この素晴らしい「人間の安全保障」の実現に向けて、私は、ベーシックインカム(以下「BI」とする。)及びハウジングファースト(以下「HF」とする。)とベーシックサービス(以下「BS」とする。)を基礎とする社会づくりが必要だと考える。
BIは、人間は生きているだけで有用であるという考え方に基づき、給付対象を全世代、全階層に広げた新たな社会保障制度である。
また、HFの前提にある住まいを重要視する考え方について考えるとき、沖縄大学教授で児童福祉司として児童相談所勤務の経験がある山野良一が、
「児童虐待の問題があるとされる家庭を訪問させていただいて、いつも感じていたことのひとつはこうした住居の狭さ、貧困さでした。」(『子どもの最貧国・日本』(光文社新書)山野良一 光文社 2008年)
と述べていることを参考にすべきである。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)には、最近、分散型サ高住というバリエーションが生まれているし、これらと小規模多機能型居宅介護(小多機)を組み合わせた施策も現れている。
「シルバーピア」は、都営の高齢者向け賃貸住宅であるが、バリアフリー化されているだけでなく、緊急対応サービスもありながら、家賃も単身用は格安のため大変人気がある。十分な睡眠と食事、すなわち、最低限の衣食住を提供するものとして、BIとHFが、ノージャッジメントで提供されるべきだと思うが、HFについては、当面はアセスメントに基づく一定のジャッジメントが必要だろう。
また、同時にその他の現物給付も改善されるべきだと考えている。
貧困に陥っている人たちが抱える問題は重層的に重なっているため、金銭的な援助に加え、保育、ヘルパー制度、仕事のサポート、さらには無料のカウンセリング等の現物(サービス)給付をBSとして提供することも必要なのである。
加えて制度の充実だけでなく、ソーシャルワークのあり方も問われている。貧困問題をはじめ、人々を多様な脅威から守るには、さまざまな視点からの、より包括的な援助が必要である。