ムラよりカイシャを優先すれば日本がもたない
男女雇用機会均等法が成立した1985年に労働者派遣法が成立し、これをきっかけに「一般職」の派遣への置き換えだけでなく、「男性並みに働く総合職女性」と「非正規女性」という二極分化が始まった。
総務省統計局「就業構造基本調査」(20~24歳、在学中を除く。)によると、1991年に高卒女性の正規雇用比率は60%台を維持していたが、2015年には30%台にまで落ち込んでいる。
資格や専門知識が必要でありながら、非正規や短期契約での募集しか行っていない職種や、賃金が非常に低く抑えられている仕事がある。
前者ならば、図書館司書、非常勤講師等が、後者ならば、保育士や介護士等がそれにあたる。看護師も厚遇とはいえず、人手不足に悩まされている。看護師、司書、保育士、介護士等は、男性よりも女性の数が多い仕事である。
また、住む場所は働く場所で決まる。現代社会では、子どもは自分の働き場所を、基本的には親の職業や住処とは無関係に探さなければならない。このため、結婚した子どもは親とは別居しているほうが普通になる。
ムラには他人の目があるけれども、都市はこうした縛りがなく、自由で、誰とも接しないで気ままな生活ができることも確かである。
しかし、かつては三世代同居等の家族や地域の支援を得ることができた介護や子育て等も、都市部ではあまり期待することができない。
現状では、社会の中でムラの切り捨て、カイシャの中での中小企業の切り捨て、大企業の中での非正規雇用の切り捨てが重層的に進行している。所得格差や地位格差が大きな社会や集団では、人々の意欲に違いが生じるだけでなく、所得格差や貧困を放置すれば、治安が悪化し、結局、高いコストを払わなければならなくなる。