リハビリは奥が深い、そして凄い
1月に比べ、自分自身でもリハビリを通して体の機能が少しずつ回復していくのを感じるようになった。
麻痺している右半身の声なき声を聞きながら、毎日を過ごすようにもなった。リハビリを経験する中で、印象深かったことをいくつか、ご紹介したい。
理学療法、作業療法、どちらのリハビリにも様々な方法や器具、道具があった。脳出血で倒れ、リハビリを受けることがなければ、知ることのない世界であることは言うまでもない。
療法士の方々は、一人一人の患者の状態に合わせてリハビリメニューを考え、患者に寄り添い、リハビリを行ってくださる。そして頻繁に血圧も測定し、私の状態も確認してリハビリをしてくれた。
本当に感謝しかない。真面目にリハビリに取り組む私だったが、時折、笑えるというか、心の中で、漫才でいうとツッコミをしたくなることがあった。
作業療法のリハビリで、道具に関して思ったことだ。肩の痛みも和らいできた私は、机上でのリハビリも行っていた。机上では麻痺を起こしている右手で、様々な道具を使い、右手全体、指を動かす運動をしていた。
ある日、リハビリ用のひとかたまりの粘土を渡され、ピザ生地大まで伸ばすように言われた。左手で触ると柔らかい粘土だったが、右手で伸ばそうとすると固く感じた。
手のひらや指先を使って、決められた大きさまで伸ばし、また塊に戻す。それを何回か繰り返し、スムーズに行えるようになった
ある日、
「じゃあ、次の粘土に行きましょうか!」
「?」
私が必死に格闘していた粘土は、ゲームで言えばレベル1の粘土で、リハビリアイテムとしての粘土は、まだ格上の粘土達(固さが増していく)が控えていたのだ!
笑うしかない。ただ、こうして手や指は鍛えられていった。
日常生活で使う道具も、リハビリでは使用する。大きなリングに洗濯ばさみが十数個留められている。それを右手で掴んではずし、またリングに留める。
このリハビリでは、洗濯ばさみを最初はなかなか掴めず、掴んだと思った瞬間「パチン」と音を立て、洗濯ばさみは空中で放物線を描き、フロアに落ちた。
「すみません」
と、私が言うと、
「あ、大丈夫ですよ」
と、療法士が拾って持って来てくれる。倒れる前は簡単にできていたことができない。親指と人さし指が思うように動かない。手は、足よりもたくさんの細かな神経や筋肉から成り立っていることを思い知らされた。