だれかがぼくらを待っている

「大変だ 大変だ」

朝早くからカラスのヘンが大きな声を張り上げて騒ぎ立てているのをホットケ山の鳥たちは聞きました。このところヘンは自ら名乗りを上げホットケ山の広報係りを務めるようになりました。毎朝早く起きては山に何か変ったことが起きていないかあちこち飛び回り見まわります。何かあればすぐそれを知らせます。

ならず者のクマが遠くの山から侵入してきたときもヘンが見つけていち早く知らせました。それで、みんなで協力して、何とか追い払うことができました。ヘンはみんなからとても感謝され、すっかり気をよくしていっそう自分のやっと見つけた仕事に打ち込みました。

あるときは枯れ木にかみなりが落ちて火事になりそうになりましたが、ヘンが見つけてすぐに知らせたので小さいときに消し止めることができ、このときもやはり、みんなから感謝されることになりました。もはや、ヘンはホットケ山にとって欠かせない鳥となりました。

それにしても、けさはなにがあったというのでしょう。鳥たちがいっせいにヘンの元に集まりました。

見るとたくさんのツグミたちが地上に落下したまま苦しそうにうめいています。翼や、胴体にみなひどい傷を受けています。中には、もう息をせず、冷たくなってしまっている鳥もいました。北の大地に渡る途中、思いがけず大嵐にあい、地面に激しくたたきつけられてしまったのです。

ホットケ山の鳥たちはすぐに行動をおこします。てわけして、亡くなったツグミを葬り、傷ついたツグミには傷の手当をしました。

翼を傷めているツグミも多く、当分この山にとどまって治療が必要でした。

「どうしよう。この鳥たちにはゆっくり休む場所が必要だ」

困ったように、顔をしかめてヘンが言います。

「大丈夫」

ツンがすぐに胸をたたいて答えました。それから、ツンは忙しくなりました。あちこちの木をつついては傷ついたつぐみがゆっくり休める場所をつくってゆきました。いくつもいくつもつくりました。

掘りぬいたばかりの新しい穴からは木々のよいにおいがしました。ツグミたちはとても喜びます。

「こんな素敵なお部屋で休めるのは何ヶ月ぶりかしら」