俳句・短歌 歌集 2021.07.14 歌集「日々、燦々と」より三首 日々、燦々と 【第30回】 飯田 義則 50年近く弁護士として活動した著者の急がず、惑わず、実直に生きた78年間の人生が詰まった短編集。 先行きの見えない不況や震災などで何かと暗い話題が多く、希望や生きる活力が見いだしにくい世の中にあって、生きることの素晴らしさ、日々の美しさをもう一度気付かせてくれる短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 歴史ある 温泉に浸たれり 我独り 美味き地酒を 湯に浮かべつつ 陸奥みちのくの 彩いろどり匂う 季ときに来て 芭蕉の句碑を 我触れてみん 閑けさの 今雑踏に 変りいる 山寺に来て 芭蕉を思う
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『高校生SM 』 【新連載】 大西 猛 あの人は私を磔にして喜んでいた。私もそれをされて喜んでいた。初めて体を滅茶苦茶にされたときのように、体の奥底がさっきよりも熱くなった。 さっきよりも空が暗くなったと思ったら雨が降ってきた。頬に、額に、冷たい雨の粒が落ちた。零下に近い空気で冷やされたその粒は今にも雪に変わりそうだった。私は自然と急ぎ足になった。その建物の前を通ったとき、雨脚が強まった。急ごうと思った私だったが、十字に光るそのオブジェを見て急に止まった。十字のオブジェは金色のメッキがされており、電飾などないはずなのにそれ自体が光をまとっていた。私はそれが十字架だと気…