診断が決まれば、腰椎穿刺により髄液を20~30ml除去する処置をすると、認知機能や歩行が改善されることがあります。そのような場合、側脳室と腹腔(脳室-腹腔シャント術)、腰部髄液腔と腹腔(腰椎-腹腔シャント術)などの間をチューブでつないで、頭蓋内の余分の髄液を腹腔に誘導する手術をします。
脳腫瘍のうち、髄膜腫のような良性腫瘍は手術で切除することによって認知機能が改善することがあります。しかし、悪性腫瘍の場合はうまく行かないことも多くあります。いずれにしても、脳神経外科の医師と相談して適切な処置をとってもらうことが大切です。
頭部の外傷後に、認知機能が低下することがあります。そのため、外傷を受けたら、できるだけ早期に適切な処置をして、脳機能の障害を最小限に留めることが必要です。
神経感染症
神経感染症は、早期に診断し、適切な治療を迅速かつ十分行うことが望まれます
a)急性ウイルス性脳炎後遺症:単純ヘルペス脳炎や日本脳炎などに引き続いて、認知症の現れることがあります。したがって、感染症の原因をPCR法などによってできるだけ早期に診断して、アシクロビルなど抗ウイルス薬による治療を行い、認知症を未然に防ぐとか、軽症に留めることが大切です。
b)エイズ:エイズの感染によって、認知症を起こすことが多いのです。抗HIV薬を3剤以上併用した多剤併用療法が有効なこともあるため、試みる価値があります。
c)進行麻痺(神経梅毒):ペニシリンなどによる梅毒の治療により、認知機能や運動機能が改善します。
d)急性化膿性髄膜炎後遺症:病初期における有効な抗菌薬を投与しますと、髄膜から脳への感染の拡大を抑え、認知症になることを防ぐのに役立ちます。
e)亜急性髄膜炎:結核の場合はイソニアジド、リファンピシンなどの抗結核薬を、真菌の場合はアムホテリシンBなどの抗真菌薬を用います。それによって、認知機能障害が抑えられます。