改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
長谷川和夫先生によって1974年に作成された認知症診断の参考にするための簡易スケールで、現在日本で最も広く使用されています。見当識、記憶など9項目からなり30点満点で評価します(図1)。
20点以下は認知症の疑いあり、18点以下:軽度認知症、14点以下:中等度認知症、9点以下:やや重度認知症、5点以下:重度認知症、の目安とされています。あくまで認知症の人を見つけ出す検査であり、認知症の確定診断や重症度分類の際の参考にとどめます。
ミニメンタルステート試験(MMSE)
米国のフォルスタイン夫妻が1975年に考案した世界で最もよく使われる知能検査です。わが国においても多くの施設で行われています。見当識、記憶、計算など11項目からなり30点満点で評価します(図2)。
21点以下で認知症の可能性が高いとされますが、教育歴や検査時の心身の状態も考慮します。22~26点は軽度認知障害(MCI)を疑い、18点以下は改訂長谷川式認知症スケールのそれに準じます。
なお、HDS-RやMMSEに時計描画(10時10分を描きこむ)を併用すると認知症診断がより確かになります。
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)
MCIとは正常と認知症の境界にある病態で、記憶だけに難があり、神経細胞は比較的残っている認知症への前段階です。アルツハイマー病を発病させないために、まだ神経細胞が比較的残っているMCIの段階から治療が始められるようになりました。
MCIを診断するには軽い記憶障害を検出し、脳内のアミロイドβタンパク(以下、アミロイドβ)をPETや脳脊髄液で検査しますが、費用が高く痛みが伴います。日本のMCIの人は約500万人で、そのうち年に約13%が認知症になります。
一方、様々な予防法が工夫されていて、MCIの1/4は正常に戻り、認知症にもならずにすみます。MCIの人も独自の世界に住むので、生活習慣改善による認知症予防も大切です。