大河川流域:多摩川下流域など
なお首都圏だけでなく、最近は全国の大河川でたびたび大規模な水害が起こっている。(図1)
2020年には熊本県の球磨川、福岡県・大分県の筑後川、山形県の最上川流域などで大洪水が起こっている。いずれも最近になって人口増加から新たに住み始めたというところばかりではなく、洪水の心配などなく、昔から人が住み続けていたところも多い。
それだけ異常な豪雨ということになるが、一度起きれば今後当分は起きないとは言えないだろう。
球磨川流域に関して、NHKが被災した104人に聞いたアンケートによると、今回自宅が「全壊」と回答した人が46%、「床上浸水」が32%、「一部損壊」が12%、「床下浸水」が6%、「半壊」が5%だったそうだ。
そして今後も同じ場所に住み続けるかとの問いに対しては、64%の人が「住む」、もしくは「住む予定」と回答し、自宅が全壊したという人の中にも45%が住み続けたいと答えたそうだ。
理由は「生まれ育った場所で愛着がある」とか「地域のつながりを絶ちたくない」「行く場所がない」「高齢で転居する資金がない」といった答えだった。一方「転居する」「転居を検討する」というのは全体の16%だったそうだ。
地方と首都圏とでは事情が異なるのかも知れないが、危険が来るとわかっていてもさまざまな制約からそこを離れられない、離れたくないという人は多い。だから一方的に、上から目線で「危険地域から移住しろ」ということが本当に「人にやさしい」ことなのかどうかはわからない。
しかし災害は繰り返しやって来る。
国全体の興廃を語ることは重要だが、それは被害を最小限に、犠牲者を最小限にすることが原則だ。
金がないから危険とわかっていてもここを離れられない、という人には資金援助をしなければならない。その他の理由で離れたくないという人に対しては、時間をかけ粘り強く説得を続けるしかないと思う。