電話はいきなり要件から話す
現場監督はとにかく時間が大切だ。というのは当然だが、相手だって時間が大切なことを忘れている人が多い。
あなたは時間を大切にしていますか? という質問に、はいと答えた人は、電話をかけた時によくある、「お疲れさまです、○○です。今、お電話大丈夫ですか?」のような挨拶言葉を思い出してほしい。もしあなたがこれを言っているとしたら、それだけで10秒くらい時間を取られていないだろうか。
電話帳に登録していれば誰からの電話かわかっているし、同じ現場で働いているなら、声でわかる。電話に出られないわけではないから出ている。それにも関わらずわざわざ聞くことに意味はあるのだろうか。
確かに、わかりきったつもりのことでも「確認する」という行為は現場監督にとってとても大切な業務プロセスだ。でも、もしその10秒を省くことができれば、鉄筋工ならその時間で鉄筋を5本以上結束しているし、大工も一加工終わっているだろう。
あなたもその10秒があれば材料発注もできるし、10秒早く帰れば寝る前の子どもの笑顔に会えるかもしれない。たった10秒で? と思うことを積み重ねると、実は大きな結果になる。
興味があれば、ボトルネックという言葉を調べて欲しい。わずか10秒のロスが、色んな業務工程を経ていく中でしわ寄せが拡大していくこともあるのだ。あなたにとって、その電話がボトルネックかもしれない。
だから、思い切って現場での電話はいきなり要件から話してしまえばいいのだ。もしかしたらそれだけで自分の時間が増えたことを実感できるかもしれない。
ちなみに僕が出会った中で最強のスマートゼネコンマンであるT氏の逸話を紹介しておこう。
最強たる所以は、業績で語ることはできない。何せT氏は、正社員ではなく、派遣社員だ。知らなければとてもそうは思えないほど、最前線で活躍している。T氏が一人いれば、数百人の職人を率いることもできるのではと思う。
一番近い存在で言えば、不朽の名作漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公、両津勘吉だ。正にその現場監督バージョンといったような人だ。
そもそもこの「電話はいきなり要件から話す」という手法もT氏から学んだもので、最初に体験した時は僕も信じられなかった。
例えば、電話に出にくい状況の時など、多くの人は「もしもし〇〇です。すいませんが今取り込んでいまして、後で折り返します」という風に丁寧に話すと思う。
ところがT氏の場合は、そんな挨拶言葉など一切話さずに、「後で電話する」だけだ。あまりにいきなり話すので、相手に聞こえない時もあるのだけど、それでも電話ができないという、一番伝えたいことが伝わってしまうから不思議だ。
T氏は面白いくらいせっかちなので、あらゆる面で時短術を駆使していた。僕としても色々と紹介したいのだが、とてもシャイでもあるT氏に怒られるとまずいので、遠慮してこの電話に関する逸話だけ紹介することにする。
T氏と出会ったのは、まだ僕が現場監督1年目の頃だ。直属の上司ではなかったのだけど、僕が一番若手ということもあってか色んな人から雑用を頼まれたりしていた中で、ある時T氏から仕事を任してもらえたのだ。
T氏に憧れていた僕は嬉しくて、何とかT氏に褒めてもらいたくて真っ先にその仕事を終わらせた。そして、自信満々に完了報告しようとかけた電話口で、T氏は開口一番「オッケー」と言って一方的に電話を切った。
報告をしようとした僕に、たったの一言も発言させず、どんな要件でかけてきたのかを読み取った上で、いきなり返事をする。未だ僕もできない、究極のスマート電話対応だ。