少なくとも、これらの嫌な結果のどれかは避けられない。その理由を知るために、まずアメリカの債務の対GDP比率を考えてみよう。

債務単独では分析できない。その債務が成り立つための所得と比較して考える必要がある。借金と所得の比較は国も個人も同じである。

もし、クレジットカードの未払が25,000ドルあったとしても、あなたの所得いかんでは問題ないかもしれない。もしあなたが年間20,000ドル稼ぐなら、25,000ドルのクレジットカードの未払残高は利息の支払いとペナルティで大変なことになり、多分個人破産となるだろう。他方あなたが年間500,000ドル稼ぐなら、多分銀行預金を使ってカードの未払を支払う事になる。

ポイントは25,000ドルが債務として大い負担か、小さい負担か、その負債を精算する所得を見ない限り判断できないのだ。国も同じである。

アメリカは現在国家債務として22兆ドルの借金がある。これは多いのか、少ないのか? もしアメリカのGDPが60兆ドルであれば、アナリストは22兆ドルの債務は少ないと判定し、管理が容易いとして扱うだろう。

その場合のアメリカの債務の対GDP比率は37パーセント(22兆ドル÷60兆ドル=0.37)で、1790年及び1981年当時と同じである。逆に、GDPがたった21兆ドルであったとしたら、債務の対GDP比率は105パーセント(22兆ドル÷21兆ドル=1.05)となる。もちろんこれがアメリカの現状だ。

債務の対GDP比率は105パーセントで危険かつ不安定な水準と言える。なぜアメリカがここまで来たかを知るには、およそ40年間、レーガン、ブッシュ41代、クリントン、ブッシュ43代、オバマ、トランプの各大統領のもとでの財政政策をレビューする必要がある。1981年から2019年までの財政政策は、野獣に餌を与えよ、野獣を飢えさせよ、という奇妙な言い回しに要約できる。

野獣とは国民が納めた税金に貪欲な食欲を持つアメリカ政府を意味する。野獣に餌を与えるとは支出を拡大する巨額の赤字をさす。野獣を飢えさせるとは支出の削減と慎重な財政政策のことだ。この支出の増加と支出の削減がせめぎ合う状況は増税と減税により増幅され、基本的に必要な支出に基づく場合に比べ、赤字の幅を極端に増減させる。

問題はこの野獣に餌を与えよと野獣を飢えさせよの戦略は次に続く政権における後継者の手足を縛るため、破滅的結果へと向かうことになることだ。この繰り返される破壊的原動力が赤字の拡大と結びつき、アメリカを現在の悲惨な債務状況に至らせた。