「何時から何時まで働いているんですか?」
など私への質問もいくつか。
私に興味を持たれたご様子(笑)。
道を確認しながら、正直にお答えしていく。
「タクシーの運転手さんは大変なんですねー。転職しようと、新しいことにチャレンジしようと思うことだけでも凄いですよ」
「わかって始めたつもりでも、やはり厳しい部分も多いですね」
「頑張ってくださいね、ほんとに! あ……そこの角の家の前で」
「ありがとうございます。頑張ります!」
ゆっくり停車。
「こちらでよろしいですか? ありがとうございます。お忘れ物にお気をつけくださいませ。料金は2600円です」
精算し、領収書と弊社のポケットティッシュをお渡しする。
「あとこちら。気持ちなんですけど、風邪などの予防に、のど飴どうぞ」
のど飴を二つお渡しした。
「えー! 飴なんて貰ったの初めて! 嬉しいです。ありがとうございます!」
「いえいえ。子ども騙しですみません。ありがとうございました」
ドアサービスを行い、ご自宅に入られる親子様を見送る。
運転席に戻り、帰り方の確認をしていると、トントン……。見ると、娘様が窓をノックしておられた。
私は何かあったかと思い、外に出て行く。
「これ、お茶なんですけど、良かったら」
袋を渡され覗いてみると、ペットボトルのお茶2本とお菓子が入っている。
「よろしいんですか? お菓子までたくさん入っていますよ」
「いいんですよ。お菓子は私、食べないのでよかったら。お仕事大変でしょうけど、頑張ってくださいね」
最近、仕事面でのストレスで正直、精神的に参っていた。なのでお客様のお気遣いが凄く嬉しかった。
「ありがとうございます。凄く嬉しいです。遠慮なく、頂戴いたします」
私は深々と頭を下げた。
「またお会いできます事を楽しみにしています。タクシーをご利用の際は、いつでも、お呼び立てくださいませ」
「はい! またお願いしますから。お話も楽しかったです」
お客様の笑顔に元気をもらう。
帰り道……。
夕焼けが沈みかけ、高台からみる街はオレンジ色に染まっていた。
私みたいな未熟なドライバーに優しく対応してくださり、本当に申しわけなく、また心から嬉しく思った。
やはり、笑顔っていいな。
笑顔をもらえると心が温かくなる。
私もそういう人になりたい。
お客様のお言葉を噛みしめながら「頑張らなきゃ!」って思った。
夕暮れの住宅地、車を走らせながら、いつの間にか笑顔になっている自分に気がついた。
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