ドングリの芽はまだ出てこない。まだ目を覚まさない。ドングリたちの眠る土の上にきれいなアゲハチョウがとまった。ぼくは言った。
「まっててね」
ミツバチも飛んできた。ぼくは言った。
「まっててね」
カラスやスズメが空をよこぎってゆく。ぼくは言った。
「まっててね」
アヤとセナにも言った。
「まっててね。今度は帽子にドングリの飾りをつけてあげるからね」
夜になるとぼくはベッドの中で考える。
「ぼくはきっとじいじよりいそがしくなる。じいじの家のドングリは三本だけれど、ぼくのドングリは十本だから」
ぼくはもっとドングリを増やしてドングリ王国のドングリ大臣になることも考える。きっと山にすむキツネやタヌキ、リスやイノシシ、そしてクマもみんなぼくのドングリがほしくてやってくる。
ぼくは言う。
「順番順番順番だよ。一列に並んでね。これで安心して寒い冬も越せるね」
ぼくはドングリのいっぱい入った袋をひとつずつみんなの背中にプレゼント。
「その日までみんなみんなまっててね」