第一章 愛する者へ 1

彼女と初めて会ったのは、雨の降る夜、白い建物の二階の部屋だった。

彼女は何もまとっておらず、全身が濡れていた。

タイプではなかったけれど、愛しいと思った。

初対面にもかかわらず優しく抱きしめた。

彼女はずっと泣いていた。

「どうして泣いてるの?」

彼女は何も答えなかった。

それからの彼女はわがままだった。

真夜中にもかかわらず、毎晩のように私を呼び出した。

すぐに彼女のところに行き、彼女を抱いた。

妻は最初から私と彼女の関係に気づいていた。

それでも私は彼女といる時間に幸せを感じていた。

彼女の名前は「若葉」、私と妻との間に生まれてきた娘。

結婚八年目にしてやっと授かった子どもが生まれてから一週間が過ぎたとき、鶴島新はSNSにこの文章を投稿したあと、若葉の写真を投稿した。

新は自分の投稿を読んだ者がオチに反応してくれることを期待していたが、それほどでもなかったことにがっかりした。

若葉が生まれるまでは、子どもだけの写真の年賀状に対して、

――これを見せられても――

と憤っていた。

それなのに、若葉だけの写真を添付したものをSNSに投稿し続け、「かわいい」とコメントがあると何度も読み返していた。

――父親の娘に対する愛に比べたら、男女の愛など半分は性欲だ――

新がSNSに投稿したこの言葉は、誰かが言っていたものだった。

若葉の顔は、新の顔に、正確には新の生まれたときの顔にそっくりだった。

――このままずっと俺に似ていたらどうしよう――

そのことが新の唯一の悩みだった。それだけ新は幸せだった。