顧客と打ち合わせをする

これまでのビジネスにおける先入観では、人と人が会って話し合い、はじめて物事が進む。いかにインターネットやスマホが普及したとしても、それらの手段で話し合いが円滑に進むことはなく、オンライン会議で重要な契約にいたることはあり得ないというものでした。

人の表情や振る舞いから人の気持ちを読み取らなければ、仕事を前に進めることは不可能なことで、オンライン会議などというドライなツールで、顧客と打ち合わせをするのはIT関連の業界に限るというのが私たちの共通の見解でした。

そうした考えによって、商談するために私たちは北海道、九州、大阪などから新幹線あるいは空路で東京に足を運んできたのです。1泊2日、2泊3日と高い出張旅費をかけ東京を目指したのです。ときには、飛行機を使い、1週間という時間を費やし、海外まで足を運んだのです。

しかし、新型コロナによって顧客にいつ会えるかわからない長期戦に入ってしまいました。こうした中で、頭を切り替えた企業があらわれました。オンライン会議をやってみよう。顧客に打診をしたところ、お互いの考えが一致し、オンライン会議をはじめたのです。高齢で保守的な経営者は、もし、新型コロナがなければ、永遠にオンライン会議に触れることはなかったでしょう。

オンラインとまったく縁のなかった人が、オンライン会議をはじめて体験し、「おやっ」と驚いたのです。「ビジネスの現場でこんなことができるのか」と気づいたのです。社内のコミュニケーションと違い、顧客とのコミュニケーションには、時間とコストの大きな負担がかかります。

何週間も前のアポイントとりにはじまり、自動車、新幹線などを乗り継ぎ、お金をかけてコミュニケーションをとってきました。ときには急用がはいり、再度のアポイントとりでさらにビジネスの進展が先延ばしになることもたびたびありました。それがオンライン会議によって、時間とコストの極めて少ないかたちで顧客と打ち合わせができることがわかったのです。

社内だけの活用であれば、働き方改革の一環として生産性は向上するのですが、それが顧客との関係に広がることで、意味は大きく異なってくるのです。ビジネスのスタイルそのものが大きく変わるのです。オンライン会議によって、ビジネスは新しい世界にシフトしたといえます。