第四章では、実際の指導の現場における、私なりの「教育哲学」を紹介してきました。
私はこれからも自分の「教育哲学」をもとに、やりたいこと、正しいと思うことを、一生懸命に挑戦します。公立学校の教師が「教育哲学」をもち、教育現場で実践を積み重ね、どんどん発信していけば、日本の教育は更によくなると期待しています。
自分の実践を発信することに「恥ずかしい」とか「自信がない」とか「一現場の教師が何を言っても変わらない」と思うことがあったり、一生懸命な行動に後ろ指をさされることがあったりしても、やめてはいけません。
伝えてもないのにわかってくれは無理だからです。それに、
「自分たちは教育現場の底辺にある歯車の一部ではない。想いをもって働いている人間なんだ」
「子どもと直接現場で関われる自分たちこそ教育の肝心だ」
という意地を見せたいとは思いませんか。
今、私がこの本を書き始めた2019年9月には、予想もできなかったことが世界中で起こっています。
それは新型コロナウイルスの感染拡大です。2020年の2月後半から、多くの学校では休校措置がとられ、そこから生徒も、教師も、保護者も、先行きのわからない不安な日々を送りました。
学校現場でも感染拡大を防ぐため、上からの指示で変更したことや禁止されたことも多く、何もしなければ、何もしなくて済む、何もできないで終わる期間でした。
しかし私は、「子どもが学校に来られない今こそ、知恵を絞りに絞って、子どものためにできることをやろう」と決めました。
もちろん公立学校ということで、実現できなかったこともたくさんありましたが、できないことにいつまでもこだわり、前進をあきらめるのではなく、この状況と、この立場の範囲の中で、生徒のためにできることとその方法を探して、ベストを尽くすことが教師としての意地だと思ったのです。
それに文句やグチを言うことは簡単ですが、自分が1ミリも前に進んでいないことに気づいたからです。
具体的には、教科書のどこを見ればわかるかをメモした解説付きのオリジナルの予習&復習プリントを作ったり、出校日や家庭訪問で渡す学級通信を作ったりしました。