第三章 逢魔が時昭和の韓国建国計画

東南アジアの独立運動が活性化し、宗主国が植民地に駐留させている軍隊だけで手に負えない事態になれば、本国に増派を要請するだろう。

しかし、準備と輸送に時間が掛かるため、近隣の話の通じる近代国家の軍隊に頼らなければ、治安維持は覚束なくなるだろうから、日本は、その地域に居なければならないという話だったそうです。

先に独立運動勢力と示し合わせておき、素知らぬ顔で植民地宗主国の支援要請を受けて、出撃、独立運動勢力と猿芝居を打って、双方損害が出ないようにしながら、日本の任されたエリアは守りつつ、その他の宗主国側の被害が拡大するのをもくろんでいたのです。

そうなれば、必ず本国で、植民地の恩恵を受けている一部の資本家や企業のために、自分たちの家族が兵士として傷ついたり亡くなったりしなければならないのかという厭戦気分が、一般国民に湧き起こり、反戦運動を起こして、宗主国の政策が変更を余儀なくされるだろうとの読みでした。

西欧の東南アジア域からの後退ののち、日本にとって喉から手が出るほど欲しい、地下資源開発権や港湾使用権を、東南アジア諸国の独立運動勢力や、有力者たちから即時に契約に応じてもらうための見返りとして提供する、その地域近代化の見本が、新しい韓国になるはずだったのです。

この韓国のように、あなたたちの国もゆくゆくは、自分たちの国として運営していくことができますよ、西欧型植民地のような簒奪など、日本はする気がありませんよと、実物を見て理解してもらい、早期に協力関係を築き、日本の経済を活性化し、富国強兵、安全圏の拡大を計り、米英に対抗するというものでした。

長距離を鉄道を使うことによって船舶の輸送に頼るより安全で兵の負担も少なくてすむ。

そして常設させた拠点にて待機、訓練させておき、必要に応じて、隣接する港より、輸送船で短時間のうちに東南アジア諸島に送る。

確保された資源は、逆のコースを辿り、満州・朝鮮・日本本土に安定して運び出す。

そのために必要な鉄道工事や付随させる港の工事のための、東南アジア方面で担当するインフラの建設担当者や管理技術者の育成、レールや枕木、機関車や客車、貨物列車の増産に必要となる工員の増員など、まだまだ準備不足だったのです。