自分のケースであるが、かつて所属していた組織の企業理念をそのまま家庭でも使っている。

「人である以上、組織の人としてスキルを磨くことも大事ですが、まずは善い市民でありましょう」というものである。

とても共感できるし、社会的に影響力のある組織には多くのタレントが集まるだろう。人は、合理的でありたいと思う反面、共感を求める生き物なのである。

企業理念は、色々な仕組みが考えられている。大きなお題として1つの文章で書かれている場合。たった数文字で表現している組織もあるし、大きなお題が1つあって、そのお題に対して自分たちが得意とすること、大事にしていることをいくつかの切り口で並べたもの、囲んだもの、様々である。

重要なことは、誰もが理解できて、共感してもらえることである。

特に日本ではお金儲けというと悪いイメージを思い浮かべる人が多いが、その組織が存在していなかったら社会的に困ってしまうという組織で常にありたいと思い創業する人が、組織を立ち上げるのである。

既存の組織に参加して活動をする人にも、同じような気持ちを持ってほしいという思いがある。しかし、そういうことを説明するリーダーは少ない。

人は、SF映画のように人の心を読んだりする超能力を備えていないから、他人の思っていることを完全に理解することはできない。

自然に自分の考えていることが浸透していくことはない。管理職は、組織・企業の価値観について自分の言葉でメンバーと話をしてほしい。

話すのが上手いとか下手ということではないし、プレゼンテーションスキルの問題ではない。この理念というものは、共感できるものかどうかの話なのである。

その人を信用してくれるかどうかでもあるのだ。有名な世界ホテルチェーン企業の理念は、スタッフがどう行動・決定したらいいのか悩んだときの拠り所になっている。

顧客中心主義という言葉が流行化している。ただ安易にフォローするのはどうだろうか。本質を理解し、自分たちの組織の中で消化して、自分たちの定義を再構築して、自分たちのやっていることと関連づける行為は良いことだと思う。

しかしながら、悪用とまでは言わないが、流行のスローガンを掲げることで、漁夫の利を得ようとしていると思しきケースも散見する。