アンカは、今や、やや興ざめして聞いていた。イェヴレムというエンジニアについては、まだ会話から彼の姓をつかむことができないでいたが、その彼がへぼ文士の友人に言っていることの全ては、事務所から届いたプランクに関する分厚い書類の中にも含まれていて、彼女は既に知っていた。
若きエンジニアは事細かくプランクについて語っていた。黒体放射と、電磁力が量子状態でしか伝達できないプランクの仮説について。フォトンと呼ばれるアインシュタインの光量子との関連について。そして、量子と命名された物理学の新分野を確立したことでプランクが最も称賛に価するという評価について。量子の概念によって、古典物理学では説明できない超越した現象を説明することが可能になった。ノーベル賞受賞が、その評価の確立に当たる。しかし、プランクは宇宙の構造に関する理論を科学に大胆に導入したように見える。
その新理論は、一つではない無数の平行宇宙が存在することを許し、その概念は、既に多元宇宙といった一般的な科学用語になっている。
そこでアンカは、タバコの端を灰皿で消して、新しい薄いタバコをカートンから引き出しながら、再び注意深く耳を傾けた。
