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あたりまえ

あたりまえ

こんなすばらしいことを、みんなはなぜよろこばないのでしょう

あたりまえであることを

お父さんがいる

お母さんがいる

手が二本あって、足が二本ある行きたいところへ自分で歩いてゆける

手をのばせばなんでもとれる

音がきこえて声がでる

こんなしあわせはあるでしょうか

しかし、だれもそれをよろこばない

あたりまえだ、と笑ってすます

食事がたべられる

夜になるとちゃんと眠れ、そして又また朝が来る

空気をむねいっぱいにすえる

笑える、泣ける、叫ぶこともできる

走りまわれる

みんなあたりまえのこと

こんなすばらしいことを、みんなは決してよろこばない

そのありがたさを知っているのは、それを失くした人たちだけ

なぜでしょう

あたりまえ

和清

この詩はとても心に響きました。その通りだと思います。

人は自分がその人の立場になってみないと、その人の苦しみや痛みはわからないと思います。この本の中に「みっつの不幸」という言葉がありますが、これも心に響く内容です。

医療従事者として心に刻んでおくべき内容だとも思いますので、以下に引用します。また、医療関係者の方はぜひこの本を読まれるといいと思います。

みっつの不幸

病人にとって大変に苦しいことが、みっつあると思います。

そのひとつは、自分の病気が治る見込みのないことです。

ふたつめは、お金がないことです。

みっつめは、自分の病気を案じてくれる人がいないことです。

私はその中でも、このみっつめの不幸が一番苦しかろうと思います。

誰ひとり自分の十字架を担ぎあげてくれる人がなく、自分ひとりで泣きながら病と闘っていくこと。

こんなに辛いことはありません。

そして、このみっつめの不幸に泣いている人は、決して少なくありません。

私がそのような患者さんを回診し、いろんな会話をしていますと、その人は泣くのです。

「今日も誰も見舞いに来てくれなかった」

淋しい、淋しいと泣くのです。

母親を捜さがす子供のように、その人は泣くのです。

人はひとりで生きられるものではないと思います。

人の心に飢うえ、愛情に飢えたひとりぼっちの人たち。

こんなに辛いことはなかろうと、私は思うのです。

(祥伝社『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』井村和清著より)

スポーツの中の言葉で、ラグビーには〝One for All,All for One.〟という言葉があります。

私はこの言葉がとても好きです。