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真相­―ヤメ検が暴く

この事件現場となったマンションもセキュリティーがしっかりしていた。出入口はオートロック式。

居住者が来訪者をインターホンの通話、室内の映像モニターで確認して電磁ロックキーを使って開ける方式だ。また、ロビーの部屋呼び出し部(玄関の部屋番号を押す所)で中の設定をすれば、四桁の暗証番号の操作で開けられるという仕組みだ。

これはセキュリティーシステムの一つとして広く採用されている。だが、早朝の新聞配達の場合などに限って、いちいち来訪者の確認というのは不便であることから、一部のマンションでは、その業者には暗証番号を教えて立ち入りを可能にしたりしている。この名古屋支店長用のマンションもそうだった。

このシステムは、不要な侵入者を極力抑止することを目的とした設備であるが、新聞配達員や入館を許されたその他の来訪者の後にこっそり付いて入館する、いわゆる「共連れ」などの方法で侵入される可能性がある。万能ではない。

現にこの鹿島銀行名古屋支店長殺し事件の犯人はこの隙を突いて侵入したのだ。「完全にシャットアウトできる」なんていう過信は禁物なのだ。

丹前は、妙な電話があってからというものは、食事などで外出して事務所に戻るのに、専用出入口を解錠するとき、必ず振り返って、不審者がいないか確認するようにした。

宅配や書留郵便物などの配達時にも気を配る。

事務所が入っているビルは、配達人は映像でこそ確認できないが、一階出入口ドア前のインターホンで配達先の部屋番号を押し、用件を言って部屋の関係者に解錠してもらって建物の中に入る仕組みになっている。配達の呼び出し音が鳴ったときには、受話器で相手がどこからの何の配達なのかいちいち確認してから解錠するようにした。

念には念を押す。部屋のインターホンが鳴って出入口のドアを開けるときにも、スコープを覗いて、配達人かどうか確認するようにした。

事務所を閉めて帰る夜道でも気を配った。不審な者が隠れて待っていることはないか、後を付けてくることはないか。

そんな状態で日々過ごしていると、ちょっとしたことにもビックリする。「疑心暗鬼を生ず」とはよく言ったものだ。

一度、こんなことがあった。

今日も事件の依頼はなかったなとしょげつつ、パソコン、複合機などの電源を落としたことを確認し、最後に部屋の電気を消してドアを開けたときだった。

白い物体が視界に入り、思わず身がすくんだ。

しかし、それも一瞬だった。